シン・ゴジラに見る日本の政治・行政の課題

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シン・ゴジラを見てみました。

一般的には、セリフが多く見づらい映画だと思いますが、官僚からすると「あるある」と思うシーンも多く、かなり取材して作っているなと関心しました。

この映画を見て、すぐに思い出すのが東日本大震災です。
未曾有の事態に対して、国がどう対応したのか、類似点も多いです。
また、映画を見ると、日本の政治・行政の意思決定プロセスの課題も明らかになってきます。

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シン・ゴジラと東日本大震災の対応を比べてみましょう。東日本大震災時の対応の情報は官邸のページにまとまっています。

シン・ゴジラ 東日本大震災
発生 8:30

アクアトンネルに亀裂による浸水。車両数台が巻き込まれる。

14:46

地震発生

 官邸による初動対応 官邸連絡室設置

ー幹部会開催(内閣官房や気象庁の幹部)

14:50

官邸対策室設置

官邸対策室に改組
国交省による避難勧告
関係大臣による総理レク(総理大臣(首相)への説明)

−官房長官、文部科学大臣、防衛大臣、国土交通大臣、防災担当大臣、総務大臣など

15:27  総理指示

 

アクアトンネル浸水事故及び東京湾における水蒸気爆発に関する複合事案対策会議(第1回)

−対処方針をまとめる

15:37  第1回緊急災害対策本部

16:00  第2回緊急災害対策本部

巨大不明生物の学術的正体等に関する緊急有識者会議
ゴジラが大田区に進出。
総理大臣会見 11:31

首相緊急会見

(発生から4時間後)

 

16:54

首相記者発表

(発生から2時間後)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、事案発生から、総理大臣による発表までの時間です。
東日本大震災では約2時間後に会見が行われましたが、シン・ゴジラでは会見まで約4時間かかっています。

その要因は色々あるかと思いますが、ぱっと思いつくのは、
・東日本大震災は「地震」であり何が起こったかすぐに分かったが、シン・ゴジラは未知の巨大生物の出現であり、事態が不明だった(実際に有識者会議などで余計な時間が使われています)。
・シン・ゴジラでは事案発生時に、総理が官邸不在だった(東日本大震災のときにどうだったかは分かりませんが、トップがすぐにいないというには意思決定までに連絡がかかるということです)。

次に、総理の国民への一報の後に、具体的な緊急事態対応を命令するまでのタイムラインです。

 シン・ゴジラ  東日本大震災
巨大生物に対する緊急災害対策本部の設置に関する閣僚会議(第1回)
0:14
官房長官会見。緊急対策本部を設置。
官邸から東京都知事に指示。

避難指示発令。

東京都知事から自衛隊に治安出動要請(自衛隊法第81条)。
超法規的措置として、自衛隊の防衛出動(自衛隊法第76条)。
13:02

災害対策基本法 災害緊急事態の布告を宣言
戦後初の武力行使命令 防衛出動

国会承認は事後

原子力緊急事態宣言

第3回緊急災害対策本部

13:20  自衛隊出動
総理指示により射撃開始せず中止、ゴジラ海中に退却。 ※複数回に渡って、官房長官記者会見
巨大不明生物特設災害対策本部編成

−各省庁の課長クラスを中心に編成。

以上が、緊急対策本部等で対策が話し合われ、実際の緊急事態対応のアクションが取られるまでの流れです。

これらを見て感じる、霞が関・永田町の問題点としては以下のようなものがあるかと思います。

前例がないことへの対処に時間がかかる

シン・ゴジラでは、巨大生物を駆除するのか、捕獲するのかといった判断に時間がかかっていました。防衛省も「前例がない」ということで決定まで時間がかかっています。その結果、事態はどんどん進行していきました。

縦割り主義

矢口内閣官房副長官が、駆除や捕獲等のケース別の対処方法を検討するように発言したところ、内閣官房副長官補は、「どこの役所に言ったんですか」と確認しています。このように縦割り主義も対処を迅速に行うための大きなネックになっています。

上意下達、下の者が意見することは少ない

映画中の閣僚などの会議の中で、事務方が閣僚にメモ入れや耳打ちをするシーンが多々出てきます。
また、議事録が残る閣僚会議で過激な意見を言って叱責されているシーンもあります。例えば、シン・ゴジラでは、矢口内閣官房副長官が巨大生物の可能性について言及して叱責されていたり、環境省の課長補佐が特例的に閣僚会議に呼ばれ、持論を展開したところ、環境大臣が課長補佐が失礼なことを言っていると詫びていました。
政府の御用学者では役に立たなかったことから、立場を上下に拘らずに課長補佐レベルが呼ばれていましたが、実際はこのように下の者が発言することはほぼないですし、発言したとしてもそれを受け入れる姿勢はなかなかできていません。

国民に対する情報統制

会見(特に総理や官房長官レベル)になると、確実なことしか公には言えません。
これは、国民が不安に思うことが社会的混乱を発生させるので当然と言えば当然ですが、結局は対応が後手後手に回る結果につながっています。実際に、上陸は想定しづらいという会見をしたその場で、ゴジラが蒲田に上陸したという情報が入ってきます。

手続の多さ

全閣僚の同意の下に内閣の意思決定が行われる日本のシステムでは、物事を進めるのに時間がかかります。劇中では、一例として緊急対策本部設置のための手続的な会議が行われていました。

誰も責任を取りたがらない

劇中の例としては、防衛大臣が、住宅地なので避難優先すべきで駆除は後回しという意見を述べていました。また、防衛省事務方も、武力攻撃は国又は国に準ずるものが対象であって、生物は対象外といった法解釈上の問題点を触れていました。このような意見もあり、総理が判断を渋っていました。

最後は総理の決断

とはいえ、事態を収めるためには、何とかしなければいけないので、最後は総理に進言する形で、超法規的措置として防衛出動の決定が下されました。総理は「今ここで決めるのか?聞いてないぞ。」と言っていましたが、最後は一国の長が判断するしかなく、緊急事態になればなるほど、決断を迫られるのは総理になります。その後も、総理に射撃の可否を問うといった判断を仰ぐことになりますが、周囲に人がいる状態で国民に自衛隊の弾を当てることはできないと判断した総理は、攻撃中止の判断を下します。

その後、ゴジラが海中に戻り、事態が一度沈静化した後、徐々に実権が実務サイドに降りてきて、対応プランの練り直しが始まってきます。ここからは、いわゆる日本的な政治行政の仕組みを少し反れ、映画でよくありそうな体制になってきますが、この続きはまた書くことにします。

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