エアビーショック(民泊解約)にみる行政の問題

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俗にいう、エアビーショック(民泊解約問題)が世間を騒がしています。
参考:Airbnbが未認可物件に対する宿泊予約をキャンセル、そして「ズボラ旅」は“救済宣言”

今回の件は、行政の規制が発端のようなので、詳細を調べてみました。

結果としては、政府の対応はかなり難易度が高いことをやっているという印象で、本当に大丈夫なのかと思うしだいです。

以下、主に法律上の課題を説明しています。

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法律上の根拠が曖昧(民泊新法施行前の行為に対して法的責任を問えない)

今回の指導の法律上の根拠が曖昧です。下のように整理できます。

①便宜供与の禁止規定は6月15日まで効力が生じない。

大前提として、民泊新法の施行は6月15日です。したがって、それまでの間は、(特例でもない限り)、仲介業者に法的責任があるとするのは困難です。

②便宜供与の禁止規定を破る対応かどうかは登録審査の段階で行われる。

次に、民泊新法施行後の問題です。
禁止規定に該当する業者かどうか、つまり、対応が問題かどうかは、そもそも登録審査段階で議論される整理になっています。したがって、登録を認めるのか、認めないの判断の中で、本来は決着がついている問題です。

住宅宿泊事業法
(違法行為のあっせん等の禁止)
第五十八条 住宅宿泊仲介業者又はその代理人、使用人その他の従業者は、その行う住宅宿泊仲介業務に関連して、次に掲げる行為をしてはならない。
一 (略)
二 宿泊者に対し、法令に違反するサービスの提供を受けることをあっせんし、又はその提供を受けることに関し便宜を供与すること。
三、四 (略)

参照:住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)
⑷ 住宅宿泊仲介業の登録の拒否(法第 49 条関係)
① 不誠実な行為等をするおそれがあると認められる者について(第49条第1項第6号関係)
・ 国規則第29条第3号で規定する「法第58条各号に掲げる行為をしている者」については、登録の審査を行う段階で確認を行う。
・ 法第58条各号については4-5.違法行為のあっせん等の禁止を参照。

③便宜供与の禁止は「故意又は重過失の場合」に問題となり、それに該当するという根拠がない。

例えば、明らかに虚偽の番号を示してる施設への宿泊に対する便宜供与が禁止されていますが、法施行前に予約されてしまった契約を保持することだけで「故意又は重過失」とするのは、困難です。

参照:住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)
4-5.違法行為のあっせん等の禁止(法第58条関係)
② 法令に違反するサービスの提供を受けることのあっせん等について(法第 58 条第2号関係)
・ 「法令」とは、本法及びその他の法令であり、法律だけではなく、政省令も含まれる。また、当該行為は、故意又は重過失の場合に対象となる。
・ 法第58条第2号に該当する例としては、次に掲げるものが考えられる。
(ⅰ) 明らかに虚偽と認められる届出番号を示している施設のあっせん又は便宜供与
(ⅱ) 旅館業の無許可営業者による宿泊サービスを受けることのあっせん又は便宜供与
(ⅲ) 売春防止法に違反するサービスの提供を受ける行為のあっせん又は便宜供与

④「便宜供与」の解釈が不明。

問題の通知である「住宅宿泊事業法の施行日後における違法物件に係る予約の取扱いについて(通知)」では、「関連する便宜供与等を禁止している法第58条各号に該当することのないよう、…」とされていますが、観光庁は何が便宜供与に該当するのか明確な判断をしていません。

法律上の根拠が曖昧のまとめ

以上のように、今回の措置は、法律上の根拠がかなり曖昧で、私企業に強制力をもって対応を求めるのは法律上無理があると思われます。

 

指導行政の限界

次に、法律上の措置でなくとも、行政指導という手法で、行政が私企業に指導することはあります。今回の措置も「通知」という形をとっていますので、事実上の行政指導といえるかもしれません。

しかしながら、日本は法治国家ですので、行政指導が濫用されないよう、制約がかかっています。

①私企業が行政指導に従う義務はない

行政指導は法令の根拠がないので、従う義務がなく任意の協力によってのみ実現されます。

行政手続法
(行政指導の一般原則)
第三十二条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

②行政指導は、趣旨及び内容を明確に示さなければならない。

少なくとも法令に規定する要件、要件に適合する理由などは、通知において示されていません。

(行政指導の方式)
第三十五条 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2 行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。
一 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二 前号の条項に規定する要件
三 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由
3 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
4 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
二 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの

行政指導の限界のまとめ

法令に基づかない曖昧な直前の通知というやり方で、民間ビジネスや消費者に大きな影響を生じさせるのは、法治国家のあるべき姿ではありません。

補足
元々宿泊事業が違法か適法かという議論は、仲介者の法的義務とは切り離すべきで、そこを混在して、違法だから取り消しは当然という主張は誤りです。例えば、Amazonで買った商品が違法だったときに、運送業者を責めるのか、Amazonを責めるのか、販売者を責めるのか、生産者を責めるのか、という問題です。単純な話ではありません。

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