【時事ネタ】仮想通貨コインチェックに対する金融庁業務改善命令の根拠(資金決済法附則第八条)

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コインチェック(Coincheck)の仮想通貨流出事故が話題になっていますが、元官僚として疑問に思った点がありました。

それは、未登録の事業者への業務改善命令(行政処分)の発動根拠です。登録を受けていない事業者に対して何を根拠に公権力を行使するのかという疑問です。

金融庁、コインチェックに業務改善命令へ 仮想通貨流出で

金融庁は、外部からの不正アクセスで約580億円分の仮想通貨が流出した仮想通貨取引所大手のコインチェック(東京・渋谷)に対し、改正資金決済法に基づく業務改善命令を出す方針だ。

コインチェックは金融庁から仮想通貨交換業者の登録を受けていません。
【参考】
仮想通貨交換事業者一覧
出展:金融庁HP

仮想通貨交換業者の登録を受けていないということは、仮想通貨交換業者として認識されていないということです。つまり「仮想通貨交換業者」らしき事業者だけど、正式に「仮想通貨交換業者」として認められていない存在です。

行政の理屈では、登録を受けておらず正式に認められていない事業者は存在しないものと同等になるはずなので、その事業者に対して業務改善命令をかけることはできません。

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コインチェックは日本の会社なので、今の理屈は、世間的には違和感があるかもしれませんが、例えば、海外のよく分からない事業者だった場合はどうでしょうか?

「仮想通貨交換業」らしきサービスをインターネットで日本のユーザーに提供している海外事業者Aがいるようなケースです。インターネット上で取引が完結する現代においては何ら不自然な現象ではありません。

この場合に、金融庁は海外事業者Aに業務改善命令をかけれるでしょうか。
こちらのケースの場合、世間的にも、それは無理という認識になるかもしれません。

しかしながら、この両方のケースに本質的な違いはありません。
本拠地が日本か外国かという違いはありますが、日本において「仮想通貨交換業」らしきサービスを提供しているのですから、その点においては同じです。
ですので、問題となるのは、日本法人か外国法人かという観点ではなく、「仮想通貨交換業者」の登録を受けているかどうかという点です。

登録を受けていれば、その事業者の本拠が日本法人であれ外国法人であれ金融庁が正式に認めている事業者であることには変わらないので、何らかの処分を執行することはできます。

しかし、登録を受けていない以上、それが日本法人であれ外国法人であれ、金融庁が処分することはできません。つまり、そもそも登録されていないコインチェックに業務改善命令をかけれるはずがありません

そう思って条文を調べてみました。

資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)(抄)

下にあるように、「仮想通貨交換業者」は登録を受けた者を言います。そして、業務改善命令の対象は「仮想通貨交換業者」です。つまり、登録を受けていない事業者に業務改善命令を執行するのは不可能です。

(定義)
第二条 (略)
2〜4 (略)
5 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
6、7 (略)
8 この法律において「仮想通貨交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう
9〜19 (略)

(仮想通貨交換業者の登録)
第六十三条の二 仮想通貨交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

(業務改善命令)
第六十三条の十六 内閣総理大臣は、仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行のために必要があると認めるときは、その必要の限度において、仮想通貨交換業者に対し、業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置その他監督上必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

 

疑問を更に深掘りして調べてみると、下の条文がありました。こちらは本則ではなく附則といって、乱暴に言えば、本則の補足事項のようなものです。(ただ、しばしば、附則の方に重要なことが書いてあります。)

ここを読むと、「この法律の施行の際現に仮想通貨交換業(中略)を行っている者は、施行日から起算して六月間(中略)は、新資金決済法第六十三条の二の規定にかかわらず、当該仮想通貨交換業を行うことができる。(後略)」とされています。

つまり、コインチェックは資金決済法改正時点で「仮想通貨交換業」を行っていれば、登録を受けずとも(しばらくは)「仮想通貨交換業」を行ってよいということです。正確な趣旨は分かりませんが、移行期間のようなものかもしれません。
そして、「前項の規定により仮想通貨交換業を行うことができる場合においては、その者を仮想通貨交換業者(中略)とみなして、新資金決済法の規定を適用する。」とされています。

つまり、この規定を根拠に、金融庁は、コインチェックに資金決済法の規定を適用できる=業務改善命令を執行可能と解釈できるのです。

附則
(施行期日)
第一条 (略)
第二条〜第七条 (略)
第八条 この法律の施行の際現に仮想通貨交換業(第十一条の規定による改正後の資金決済に関する法律(以下この条において「新資金決済法」という。)第二条第七項に規定する仮想通貨交換業をいう。以下この条において同じ。)を行っている者は、施行日から起算して六月間(当該期間内に新資金決済法第六十三条の五第一項の規定による登録の拒否の処分があったとき、又は次項の規定により読み替えて適用される新資金決済法第六十三条の十七第一項の規定により仮想通貨交換業の全部の廃止を命じられたときは、当該処分のあった日又は当該廃止を命じられた日までの間)は、新資金決済法第六十三条の二の規定にかかわらず、当該仮想通貨交換業を行うことができる。その者がその期間内に同条の登録の申請をした場合において、その期間を経過したときは、その申請について登録又は登録の拒否の処分があるまでの間も、同様とする。
2 前項の規定により仮想通貨交換業を行うことができる場合においては、その者を仮想通貨交換業者(新資金決済法第二条第八項に規定する仮想通貨交換業者をいう。)とみなして、新資金決済法の規定を適用する。この場合において、新資金決済法第六十三条の十七第一項中「第六十三条の二の登録を取り消し」とあるのは、「仮想通貨交換業の全部の廃止を命じ」とするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
3 前項の規定により読み替えて適用される新資金決済法第六十三条の十七第一項の規定により仮想通貨交換業の全部の廃止を命じられた場合における新資金決済法の規定の適用については、当該廃止を命じられた者を同項の規定により新資金決済法第六十三条の二の登録を取り消された者と、当該廃止を命じられた日を同項の規定による同条の登録の取消しの日とみなす。
第二条〜第二十条 (略)

 

変だと思って調べてみると、きちんと法律に根拠がありました。

行政は法律に基づき公権力を行使しますので、超法規的措置でない限り、必ず法律の根拠が必要です。

今回のケースもよく調べてみると、「法律による行政」の実行ということになります。

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