政府機関の地方移転についての所感。~文化庁の京都移転や消費者庁の徳島移転~

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安倍内閣の取り組みの一環として複数の政府機関の本部機能を地方に移転することが検討されています。

先日、文化庁が京都に移転する方針が決まったとの報道がありました。安倍政権の強い政治主導の中で、今までは困難だと思われていた政府機関の地方移転が今後も決まる可能性があります。

個人的な見解として、この件についての所感を書いてみます。

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文化庁のほかの有力案件としては、消費者庁の徳島移転があります。理由は担当の河野大臣が前向きだからです。河野大臣は強力なリーダーシップを持っており、事務方に巻かれるタイプではないですし、本格実施する可能性もあると踏んでいます。消費者庁については、まずは試行的に実施することになったようです。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/01/14/agency-for-cultural-affairs-to-kyoto_n_8984508.html

そもそも政策の決定はどのように決定されるべきか

政策の決定にはメリットとデメリットを比較衡量しなければなりません。デメリットを論じる際には、その緩和策およびそれに係るコストも考慮に入れるべきでしょう。

政府機関の地方移転は、政策というより行政機関の制度論ですが、いずれにしてもメリットがデメリットより大きくないと実現する意味はないものです。

なお、政治案件や何らかの権力関係で動いてしまう案件も多いのですが、原則としては、やはり、政策を実施することによる便益が費用を上回るかどうかです。

政府もそのような観点から、政策に対して事前評価を行っています。
総務省|行政評価|事前評価の拡充等

政府機関の地方移転のメリット

地方経済の活性化、今の安倍政権でいえば、「地方創生」に繋がる可能性があります。ただし、移転しただけでは効果がありません。例えば、移転により雇用が生まれるとか、政府機関が近くにあることにより、企業や消費者が相談しやすくなり、企業活動の活性化や消費者利便の増加に繋がる可能性はあります。

しかし、政府機関は具体的な事業をその場所でないとできないわけではなく、事実、各種の政策は、中央の本局が決定し、地方支分部局が実際の執行を担っています。その意味では、政府機関(中枢機能)が地方に移転したとしても即座にメリットがあるわけではないと考えられます。

政府機関の地方移転のデメリット

一言でいえば、「業務が滞る可能性が高い」ことです。

想像すればすぐに分かりますが、例えば、国会対応や議員対応があります。

組織が東京にない場合、毎日朝早くから行っている国会対応はどうするのでしょうか。例えば、質問議員に対しての前日の質問取りや当日の大臣・長官へのレク、本番の国会での答弁はどのようにやるのでしょうか。

下記の記事(日経新聞)によると、文化庁はそもそもあまり国会に当たらないと評価されています。
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160116&ng=DGKKASFS15H4F_V10C16A1PP8000

たしかに、そもそも国会に当たらないので負担が少ないという客観的な事実※があるのであれば、国会対応自体は問題ないかもしれません。議員対応もしかりです。

※感覚論ではなく、例えば、年に○回国会答弁が必要となり、その際の作業に必要な人員や各々の人員に係る労働時間等について数年分の統計を取るなどして、客観的に評価することが必要です。

しかし、万一、国会に当たってしまった場合はどうするのでしょうか。

文化庁長官(政府参考人)答弁の場合、前日深夜(日付的には当日)にレクを行い、答弁をセットする場合が多いと思いますが、答弁本番の対応はどうするのでしょうか。

国会は通常朝早くからやっています。上記のとおり、答弁は夜にセットされるので、前日に京都から東京に移動するのは困難です。また、当日朝に移動する場合は間に合わない可能性が高いですし、仮に間に合うスケジュールだったとしても、新幹線等が遅延してしまった場合、対応できません。

政務三役(大臣、副大臣、政務官)答弁の場合、当日朝ににレクを行い、すぐにセットし、そのまま国会答弁というパターンが通常です。このため、当日の対応には問題はなさそうですが、政務三役に説明する官僚は京都から東京に移動しなければなりません。

この場合も、事務方としての答弁がセット(政務三役に見せる前、政務三役の秘書官までセット)できるのはかなり遅い時間になります。

上記のような問題を踏まえると、結局は「質問通告の時間を早めることを遵守させる」ことをセットで行わないと、相当程度の弊害が出そうです。

実際は、質問通告は前日の夕方以降に行われたりするので、そこから対応を始めていたのでは、全く間に合わないということです。

また、「業務が滞る可能性が高い」のもう一つとして考えられるのは政府部局内での直接のコミュニケーションの減少です。

現状、ほぼすべての政府機関の中枢機能(研究所等は除く)は東京にありますので、同じ部局内でのコミュニケーション、他部局とのコミュニケーション、政府中枢(官邸等)とのコミュニケーションは対面で行われることも少なくありません。

政府機関の中枢機能が地方に移転した場合、対面でのコミュニケーションができなくなります。

電話とメールならどこでもあるからそれで問題ないではないかという意見もあるかもしれませんが、ノンバーバルコミュニケーションの重要性は異論ない重要な要素でしょう。

したがって、政府機関の地方移転に際しては、このようなコミュニケーションの弊害を解消する措置も併せて取る必要があります。

まとめ

政府機関の地方移転そのものを反対するわけではありませんが、デメリットや克服すべき課題が非常に大きく、課題をきちんとクリアできるような措置を講じることを前提に、メリットがデメリットを上回っていることを検証した上で、進めるべきでしょう。

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