産業政策の意義。行政の民間介入は必要なのか?

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産業政策のカバーする領域は、定義によって様々だと思いますが、ここでは、「ある産業や業界を発展させるための政策」と考えることにしたいと思います。
国などの行政が民間の活動に介入する際の理屈は色々あります。
分かりやすいのが、安全のためなどの消極的規制であり、自動車運転のルールだったり、運送事業の許可だったりするわけです。

今回は、そもそも産業政策は必要なのか?という視点で考えたいと思います。
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前述の安全のための規制などとは違い、産業政策というのは実態がかなり分かりづらいです。
一昔前の銀行の護送船団方式といえばいいでしょうか?戦後に通産省が主導した自動車業界の再編などをイメージすればいいでしょうか?
基本的には、そのイメージがいわゆる産業政策というもので、経済産業省をはじめ、各分野の省庁が大好きな政策であります。
例えば、役所の文書を読むと、よく「◯◯業界の健全な発展のため・・・」みたいな表現がありますが、まさに産業政策によって業界を振興しようという趣旨であるわけです。

この産業政策について、経済学を少し学んだことがあれば、単純な疑問が生じると思います。
「そもそも事業の成長のために行政が関与する必要があるのか?」という単純な疑問です。

アダム・スミスの「見えざる手」ではないですが、市場が万能であれば、ビジネスは勝手に発展していくわけです。
仮にそのビジネスが発展しなかったとすれば、それは単純に需要がなかったり、市場原理からして成り立たなかったというわけであり、あるビジネスが淘汰されていくのは、自然なマーケットの仕組みであります。

そうであるとすれば、なぜ産業政策というものが必要なのか、という疑問が生じてきます。

一つ、最近の事例を上げてみるとすれば、金融庁が進めようとしている、地銀の生き残りの話があります。
金融庁:地銀を共通指標で比較、立ち入り検査で改革迫る-行政方針

地銀の経営について一番詳しいのは、おそらくはその地銀そのものであって、仮に内部で気づけない経営上の課題があるとすれば、経営コンサルタントなどの外部の別機能の民間からの知見を入れるのが普通でしょう。

実際の金融業務や経営に携わったことがない金融庁から経営の指摘をされるのは本来的にはおかしな話です。
しかし、金融庁は地銀に対して監督権限を持つので、地銀としては金融庁を無視するわけにはいきません。
(これは他の省庁でも同じですが、監督されている業界が監督省庁に逆らうのは難しいので、実際のビジネスニーズとは乖離した内容の政策がしばしば行われています。)

金融庁は健全な競争を促したいようです。その一つとして地銀の統合の話がありますが、競争を横串で見ている公正取引委員会は、今回の地銀の統合について反対しています。

これは、産業の発展には何が必要か?という認識の違いや、健全な競争とは何か?との認識の違いから、それぞれの省庁のスタンスの違いが出ているように見えます。

産業の発展のためには、資金が必要で、特に幼稚産業や衰退産業は資本市場からの資金調達が困難だから補助金が必要だ、と考える部局もあるかもしれません。
最近の例で言えば、乱立する官製ファンドが泣かず飛ばすで問題になっている話がありますが、そもそもの設立趣旨は、民間では供給できないリスクマネーの引受けなわけです。
ガバナンス効かぬクールジャパン機構がもたらす惨状

したがって、当然ながら焦げ付くリスクは高く、マーケットで成り立たないそのようなビジネスを無理やりに存続させる必要があるのか?という問題が生じてきます。
幼稚産業や衰退産業も生産性が低くても生き残れるようにしなければいけないという発想で産業政策を立案すれば、このような政策も是とされるでしょう。

一方で、古典的な経済学を基本として、マーケットメカニズムに委ねるべきという発想で考えれば、市場で成り立たないようなビジネスを税金で支援する必要はないということになります。

ここは、産業政策の意義をどう捉えるかによって、かなり考え方が変わってくるところだとは思います。

また、基本的にはマーケットメカニズムに委ねるべき、つまり市場競争に委ねるべきという立場を取った場合でも、その競争のあるべき姿の認識の違いにより、政策が異なってきます。

例えば、先の例では、金融庁が描く「健全な競争」と公正取引委員会が思う「健全な競争」が異なるからこそ、地銀の再編を是とするか非とするかの判断が分かれているように思えます。

このように、一口に「産業政策」といっても、元となる考え方のベースの違いによって、政策のアウトプットがかなり変わってくることになります。

今回、産業政策の分析を試みたわけですが、論点や課題を提起した状態で、最終的な答えまでたどり着けませんでした。
おそらく答えを出そうとすると途方もない分析になるので、今回は物事の切り口としていくつか考えを提示するところで留めておこうと思います。
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