厚労省や国交省の官僚の収賄容疑から見る霞ヶ関官庁の構造的問題

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少し前の話ですが、厚労省の官僚が収賄容疑で逮捕されました。また、国交省の官僚も収賄容疑で逮捕されています。私は、この問題は霞ヶ関官庁の人事のシステムの問題が一定程度起因するのではないかと考えています。

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厚労省の事件では、業者が企画競争で入札できるように便宜を計ったということで、仕様書の原案などを書かせていたようです。国交省の事件では、格納庫の土地使用許可について、使用料を滞納し今後使用料を支払える見込みがない業者であるにも関わらず、支払い能力がある旨を説得して使用許可を得ることができるようにしていたようです。

今回の2つの事件はどうして発覚したのでしょうか。会社の経費で直接個人の口座に振り込むような証拠が残る方法を使ったとは思えませんので、両方とも、社長のポケットマネー(社長の給与)を現金の形で渡していたのではないかと思われます。また、電子メールで危ない情報のやり取りなどもしていないと思います。厚労省の事案では、仕様書の原案を業者に書かせていたようですが、おそらく個人用のパソコンを使ってやり取りをしていたのでしょう。

今回の2つの事件のポイント

今回の事件の共通するポイントとしては、

①彼らが意思決定をできるようなポストにいなかったこと

②キャリア官僚ではなくノンキャリア官僚だったこと

という点が挙げられると考えられます。

もちろん、実際は、他にも複合的な要因や背景が多々あると思いますが、共通する背景を端的に表すと上記のような点になると思います。

①についてですが、厚労省の中安容疑者は「課長補佐」で、国交省の川村容疑者は「係長」です。いずれの案件も、課長補佐や係長の権限で決められるはずはなく、課室長の決裁や会計担当部門の決裁も必要だと思われます。

決裁権者が意志決定者ですので、彼らのレベルでは決裁が通るように説得するくらいしかできません。

沈まぬ太陽では、運輸省の課長が空港の発着枠の配分に際して、国民航空から愛人用のマンションの供与を受けている姿が描かれていましたが、課長くらいのレベルになると話は別です(この話はさすがにフィクションだと思いますが)。

蛸壺化した官僚の人事制度

厚労省の事件について、中安容疑者は容貌や勤務実態に問題はあったものの、知識や能力などはかなり評価されており、省内では医療情報の分野で太刀打ちできる人がいない唯一の存在となっていたようです。

一方、国交省の事件では、(少なくとも報道で見ると)川村容疑者にはそのような事情は窺い知れません。従って、ビジネスジェットの分野で専門的で代替できない人材であったかというとそうではないように思われます。しかしながら、上司が説得されていることからも、仕事自体は有能で、上司からすると、「この人の言っていることは信じられる」という信頼は得られていたと思われます。

今回の2つの事件と霞ヶ関官僚の人事制度の関係について考えてみます。ノンキャリア官僚は同じ部局にずっと在籍し、その道のスペシャリストとしての能力を求められます。ときには出向で他省庁に行ったり、省内でも別の部局に異動することはありますが、基本的にはある部局(だいたいは「局」単位です)で採用され、その部局の仕事をずっとしていくことになります。同じ分野をずっと経験していますので、必然的に専門性が高くなります。

一方、業界側から見ると、常にその部局にいるノンキャリア官僚とは必然的に距離が近くなっていきます。ただ、ノンキャリア官僚はキャリア官僚とは昇進のスピードが違いますので、実質的な権限があるポジションに就くまではかなりの時間がかかることになります。

反対に、キャリア官僚は早く出世するため権限があるポストに就くのも早いですが、部局を横断して異動するので、同じ部局に何十年も留まったりしません。従って、業界との関係が深くなりづらい面はあります。キャリア官僚が同じ部局に長くいられないことのデメリットはたくさんあります。着任して数ヶ月もすればその道のプロとして仕事をしなくてはならず、異動直後の勉強は本当に大変ですし、業者と長く付き合えませんので、本音ベースで話ができる関係を構築するのがなかなか大変です。この点はビジネスと同じだと思いますが、仕事上のステークホルダーといかに腹を割って話せるかはとても重要です。このようなキャリア官僚のデメリットもありますが、一方では、業者との癒着は生まれづらいという人事制度の構造になっています。

反対に、ノンキャリア官僚はどうしても業者との距離が近くなるという構造的な人事制度の問題を孕んでいます。 これは人事制度上の欠陥なのかもしれません。

また、ノンキャリア官僚はスペシャリストとしてその道をずっと歩んできていますので、上司であるキャリア官僚(課長や課長補佐)よりも、その分野の知識が豊富です。このような構造があるために、キャリア官僚である上司はその道のプロの意見を聞いて信じてしまった、つまり不正を見抜けなかったということが今回の事件の背景にあると思います。

求められる対策は何か

両事件を受けて、厚労省と国交省は早速対策を始めたようです。厚労省は省全体での検討体制を作り、国交省は局としての検討体制を作ったようです。

塩崎大臣閣議後記者会見概要 |大臣記者会見|厚生労働省
報道発表資料:航空局職員非違行為事案に係る再発防止検討委員会の設置について – 国土交通省

今回の事件は、その省あるいはその局独自の問題だったのでしょうか。私にはそうは思えません。これは霞ヶ関全体の構造的な問題であって、対策を講じるのであれば、霞ヶ関全体で考えるべきだと思います。霞ヶ関全体で不正をチェックするガバナンスのあり方や人事制度のあり方を考える必要があるのではないかと思います。

今回の2つの事件を受けて、両省がどのような対策をまとめるのかはまだ分かりませんが、付け焼刃の対策に留まるのではなく、構造的な問題にまで踏み込むような対策がまとめられることを望みます。そして、両省の対策を霞ヶ関全体に広めて、今後、霞ヶ関の世界でこのような問題が起こらないようにしなければなりません。

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